[びょう、と凍るような風が吹いて、スカートをばたばたさせる。
全くお優雅ではない罵倒を小さく口の中で呟き、ディルドレは毛皮のコートの襟元を掻き合わせた]
[今年は妙に寒い気がする。
義弟が村長になってから、何でもかんでも悪くなっている。
皆そう云っている。前の方が良かったと。
皆って誰だって?そんなのどうでもいいだろう]
[せめてあの義弟が、ベルガマスコ少将くらい気品があればいいのに。
この田舎の村に、少将程の方がいらしたのは奇跡と云ってもいい。
やはり中央の人は物腰が違う。人種すら違う気がする。
ディルドレの、田舎にしては素晴らしい屋敷やコレクションや服のセンスでさえ、あの方の目には泥臭く映るのではないかと思うと、気が気ではない]