ん、ヨアヒムか。いらっしゃい。今日のお望みは?
[何やら袋を担ぐヨアヒムが店内に入ってくると>>64、冷気が再び熱を食らいに侵入してくるのだった]
ん……林檎?
[林檎が出来すぎたから貰ってほしいと言う彼の背負う袋からは、成程確かに床におろすと、質量の籠った低音がくぐもるうめき声のように鳴り響くのだった。
彼が差し出す林檎の赤は小川の清流を思わせる鮮やかさを保ち、ヘタの端の瑞々しさと絡んでその新鮮さを厭味なく主張する。そんな果実を見て真っ先にパンの具材としてどのような役に成るだろうかと考えるのはパン屋としての性だろうか]
……うん。そういうことなら貰おうかな。
[つぶやくように告げながらヨアヒムの瞳を一瞬だけ窺うと、付け加えるように一言添える]
この林檎を使ってパンを作るから、もし良ければ後でまた来ると良い。代金はいらないから。
[言いながら、何を作るか思考を進める。ヨアヒムに希望があるようであるのなら、その期待通りのものへと仕上げるだろう]