[ベリアンのポケットから落下したものを見咎めて、テオドールの声が尖る。
まだ”霊薬”の味が残っているかのような苦み。
だが、ベリアンには語られなかった何かを自分の中で否定して、テオドールは話の続きを促す。]
──御意、
[テオドールの目に留まった鷹笛はイングリッドのものだ。
ならば、テオドールの脳裏を掠めたのは彼女のことであろうと予測はつく。
ベリアンはここしばらくイングリッドを見かけていなかったが、ベリアン自身がモーリスから離れていたという事情もあって詳しいことはわからない。
ただ、おそらくイングリッドは何かしらの問題を抱え、テオドールはそれに気づいている──
それだけのことを短時間に推察したが、テオドールが取り上げなかったことだ、ベリアンもこだわって話を逸らすことは避けた。]