[――グラスの割れる音が遠くでした。
盾にしようとするように武器を握る右手を前に出したまま、左手で耳を押さえ、顔を顰める。
ジークムントの言葉は僅かに聞こえ、目で唇の動きを読み、意味を知る。]
……、大事ない。
アプサラス、あんたは…。
――って、おい。お前…!
[血親は無事だっただろうか。後ろにいる筈の彼女に視線を向ける。
男はローブを被っているので顔や身体に大きな怪我はない。それでも服は多少焦げたが。
不意に肉の焼ける匂いが鼻を擽った。
其方に視線を向ければ、焼けていたのは彼の腕である事に気付き、反射的に怒鳴っていた。]