― 原下新町商店街 ―
五月。
街路樹の葉桜も終わって、濃くなった緑を初夏の日差しが透かし、モザイクタイルの上に光のかけらを散らしている。
子供たちの歓声の向こう、今日も町のゆるキャラマスコット、ラヴィがぷいぷいと愛嬌を振りまいていた。
「――それで、お式はいつ頃になりそうなのかしら。やっぱり六月?」
青空に一つだけはぐれた雲のようにひょっこり浮かんだ少年にそう問いかけると、さぁ、と首を捻る。
「そう」
悄然と肩を落とすと、なんでそんなに知りたいの?と返ってくる。
「出来れば、ブーケを作らせて貰いたいから。時期によって入ってくるお花も変わるから……」
ふうん、と気のない相槌を打った少年は、預けた花を注文先に届けた帰りだった。同じ商店街にあるお茶屋さんに入り浸りの近頃でも、たまにこうしてアルバイトをしてもらっている。
「ところで、お菓子の修行はどう?」
「順調だよー!」
「そう。頑張ってるのね。……早起きは?」
答えは、ぺろっと出した舌でわかった。