(うげ……っ! 思い出した……!)
[聞き覚えがあった名前だなと記憶を探れば、存外掘り起こせた。
孫の様だと言いながらしっかりと金の払った分は仕事をさせてくれた老いぼれの聖職者や、何でか妹として呼べと迫ってハイハイと言うことを聞いてやっていたどこかの貴族サマ。
他にも諸々といた気はするが、彼らはよくアルビンという名の行商人を連れてリーディアのご機嫌取りをしてくれたものだ]
世間って狭いものですね。
[小さく呟いた言葉は、アルビンに思い出した事を告げる。
もっとも、彼なら自分の事は黙っていてくれそうかなと、淡い期待はあるのだが]
(でも、まぁ……)
[他人の心や考えなんてあっけなく変わる。
それを知っているからこそ、アルビンには用心しようと女はひっそりと思った*]