―倉庫―
[転移を受けた瞬間、地形を確認して壁の傍へ寄った。
どうせこれから碌でもないことが、待ち受けているのは確定なのだから。
帽子の下、空色の瞳を滑らせる。
明かりも灯っていない、薄暗い倉庫のようだ。
不味いなぁという焦りは、表情に零れることはないが。
次の瞬間、電撃が走るような寒気、
壁越しの背後からするりと腕が伸ばされるような気配。
反射的に後ろへ飛んで、その"相手"と対峙する。
自己紹介など受けなくても、理解に足る。
父と同種の魔力を蓄えた、畏怖すべき――元老吸血鬼だと]
――…御機嫌よう?
[にこり、と愛想よく微笑んでみる。内心の焦燥は消せない。
罠がある、と予測はしていたが。
流石にこれは少し、対処不能すぎやしないだろうか]