― とある終わった話 ―
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恋多いものがまた恋を失った。
割といつものことである。だが、この失恋はアランにとっても特別であった。
――恋や駆け引き、そういうものではなく。
大事なものを守る為の自らの判断が、彼女の守りたいものと二律相反となった時。
二人は終わったのだ。
今も耳に残る、彼女の感情に震えた声。
目当てだったのは、私ではなく…… と、続く言葉。彼女に一言も言い返せなかった自分。
彼女は騎士団には残らず自らのペンホールズを出たが、ただ朝もやかかる鐘楼から見送るだけに留まった。
そう、それは原石と出会う前の出来事である]