[ダーフィトが青年と呼ばれる年になり、
肩書きに訓練兵という名前が加わったとき。
記憶の中でも特に珍しく、
父と長く顔を合わせることになった日があった。
そして、父の隣にはダーフィトの婚約者だという女性がいた。
マクワイアの家においては将来も、
未来を共に歩む相手も、全てが定められている。
それまでその事実受け入れていたと思っていた。…はずだった。
けれど、自分の「婚約者」だと名乗る女性を目にしたとき、
ダーフィトは背中を氷水が流れ落ちるような感覚に陥った。
それからだ。隠れて行っていたサボタージュが恒常化したのは。
或いは、課された日課を拒否して、
何をするでもなく空を見上げているようになったのは。
…所狭しと詰められた予定が無くなり、
幾らか時間ができれば、邸宅の地下に資料室があることを
発見して入り浸るようになるまで、さして時間はかからなかった。]