[連れて来たイドが舞う火の粉に怯え、手の甲の上で震えている。
そろそろ放してやろうか。イドの耳に正しく届く様、燃え盛る炎の前、足を止め、口許へと小さな作り物の耳を寄せて]
…――ねぇ、ご主人様。たのしかった?
それとも、此処からがお楽しみなのかな?
俺の願いはただひとつ、この閉じた箱の中、「何処にも行かなくて良い」って、先生と…皆と一緒に閉じ込めておいてくれる事だったのに。
勝っても、負けても、もう叶わない願い。…――貴方は知っていたでしょう?
もう、俺も要らないんだよね――…
ちょっとだけ、寂しいな。
[「主人」と呼ぶのはゲームの中、自身を勝利へ導くルージュの事では無い。ゲームのホスト、王子に向けて。
この身の正しい飼い主へと向けて]