─ 執務室 ─[さらさらと書類にペンを走らせる音ばかりが静かな室内に響く。本日目を通して署名をしたのは、さて幾通だったか、そのうちの一通、ランヴィナス公国のとある鉱山を巡る取引に関する書面に難しい顔で視線を落とす部下───教え子に、男は書面から顔を上げて柔らかい笑みを向けた。] ………納得がいきませんか?[その書面には、取引相手の商会の名も記されてある。そこに記された名は、エティゴナ商会の名ではない。もっと小さな別の、条件としてはエティゴナ商会に劣っていた者の名前だ。]