[肌に刺す冷たい風に、彼女は身震いした。
羊や兎ですら言葉を話すというのに私は、と少しだけ自虐する。儚げな面持ちで、彼女は議題を眺めた。
彼女にとって筆談というのは、手話の通じない相手への貴重な意思表示手段だったから、お世辞抜きに端正な文字で、非常に読みやすいものを書き上げたのだった。
■1.手が離せない用で急にいなくなりがちです。
■2.早めだと早く寝られて嬉しいです。
■3.予定はありません。
■4.意思疎通に難があり、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
吹き下ろす風の中に、茶花の弁とその匂いを見つけ、少しだけ表情和らげに、彼女は仕事に向かうのだった。]