[山奥の自然の音とは違う、澄んだ音色の響きが耳を掠めた後。
鞄の中から現れた たおやかな腕と、
しょんぼりと項垂れる様にも似た所作]
……! 人形か、驚いた。
一瞬、人間の腕かと…良くできているな。
紛争地での武装解除の交渉を生業とする男は、
自然と素のネガティブな感情を顔には出さなくなったが、
それでも、意図せず微かに眉を寄せたのは見られてしまっただろうか。
“ヒト”ならざる者が、あまりにも“生きている”かのようである、
本能をザラリと撫でられるような奇異感を感じて。
いや、そんな筈はないだろう。
人形なのだから、人工知能的な何かを搭載してでもいない限り、
ゾフィが動かしているはず…思い当たって、咄嗟に彼女を見遣る。
晴眼な左目の視界の端、ゾフィの指が僅かに動いた気はした。
それが人形を操る所作なのか、それとも別の何かかは不明だったが]