― 幼い日のこと ―
ねえ、あれはなに?
[ 珍しく尋ねごとをしたのは
誰相手にだったのだろう。
指さした先には高い塔があった。
少女の暮らしてきた環境に
あれほど高い建造物は無かったから
国葬や祝い事の時に鳴らすのだよと
教えてもらえたなら、
ぱあ、と、顔中に笑みを乗せて ]
悲しいことも、嬉しいことも
みんなで分けられるんでしょう?
…どんな時もさびしくないね。
いいなあ……
[ "おうさま"っていいなあ、と
憧れる声の色を隠すこともなく紡いだ。
今は触れられない温かな思い出の欠片。* ]