っ、そんな場合じゃ…
[思わずほっこりしていたら、寝過ごして昼休憩を大幅にオーバーしていることを忘れていた。慌てて立ち上がり、必要な仕事の中から優先順位をつけていく。
艦の重要機密に関れる程の立場ではないものの主計科の仕事は多岐に渡っていて、意外と忙しい。おまけに上と下との仲介役としての役割も担っている]
あ。名簿…
[気になるとはいえ、単なる噂を鵜呑みにして自分のやるべきことを後回しにするわけにはいかない。ということは、本来の睡眠時間を削ることになるだろう。そこは昼寝を長めに取ってしまったので仕方ない。
本を片手に急ぎ足で歩いていると、前を歩く青年の姿に見覚えがあった。正確にはきっちりとはめられた白い手袋に。
階級は自分よりもずっと上だが年が近く、その分同じ主計科の上官よりも頼みごとをするには頼みやすい気がした。名前はたしか――]
中佐!
[一瞬考えたが思い出せず、咄嗟に相手の階級だけで呼びかける]