[青年はエルの部屋へ向かうべく、青年は城内をつかつかと闊歩していたが、ふと何かを思い出したように足を止める。
ごそごそ、と鞄を探れば、出てくるのは細身のナイフ。
吸血鬼の身でも握れるよう柄は木でできており、細かい装飾が施されている。そして刀身は、鈍く光る銀。
青年は吐き捨てるように言った。]
こんなもの。
体格の不利を補うためのものだろう。
……そんなだから、いつまで経っても庇護下から抜け出すことができないんだ。情けないことだ。
[暫く裏に表にとナイフを弄び、観察していたが]
まあ、使えるものは使わせてもらおうか。
[ふん、と不遜に鼻を鳴らして、取り出しやすいポケットに小さな凶器を仕舞い込んだ。
その時だっただろうか、青年の鋭敏な聴覚が、
悲鳴と助けを求める声>>67を耳にしたのは。]