[十年以上も共に過ごしているのに、彼に実家の話をしたことはなかった。 怪訝そうに尋ねられた初対面の時>>57から、彼への態度はどことなく警戒心を覗かせるものとなっていた。 老神父へは、そのようなことはなかったのに。 おっしゃる意味がわかりませんわ。 この村は、もうわたくしにとって故郷のようなものですのに。 いつかの問い>>59に対しても笑みで返したが、無理をしていることはいとも簡単に見透かされてしまっただろう。]