―村に至る山道の途中―
[彼女の撫でる手が、そっと…そして次第に深く触れるうち、
白い犬は気持ちよさげな表情を浮かべ、
身を預けるように頭を摺り寄せる。
無意識にだろう彼女の口元の笑みに、男もごく僅か瞳を和らげた]
夢が現実になる村、か。
やっぱり目的地は同じなんだな…俺たちもだ。
こういうのも、君のいう“縁”の一つかな?
[予想通りの行先の答が返る。
彼女曰く“夢か幻みたいな噂“。
それでも、こんな山奥まで大荷物で来るほどの夢が、
彼女にもあるのだろうか。
白い犬を撫でながらも向けられた双眸に、そんなことを思う]