[ただ、彼の傍、シャンデリアの元まで足を向けないのは…。――眩しいのだ。飢餓状態では夜闇を苦手とする男の瞳だが、平時の明るさも得意ではなかった。もっともそれは悟られぬよう、表情は穏やかなまま、唯、帽子は目元に影をつくる――] 僕の血ですか……? 果たして御口に合うかは分かりませんが。 味見位なら、構いませんよ。 貴方になら。[弧を描く口許にあてた人差し指は、ゆらりと牙を滑り。たった一すじの赤が、指先を静かに伝っていく]