― 王都・城門前 ―
[儀式の準備の合間を縫って、魔王は街の外まで足を運んでいた。
側に控える近衛の手には、大きな袋がある。
手を伸ばした魔王が袋の中から掴み出したのは、大ぶりなナイフほどもある牙。
魔法的処理を施した、竜の牙だった。]
さて。
研究書の通りなら、これでうまくいくはずだが。
[呟いて、ぽいとそれを地面に投げる。
土の上に落ちた牙はしばらく沈黙していたが、やがて植物が芽吹くように白い枝を天へ伸ばし始めた。
伸びた白は太さと硬さを持ち、人の骨格の形を模して成長する。
それだけではない。胴に胸当て、腕に剣と盾、頭に兜までを備え、一個の戦士の形となった。]