[ 今度は、飛び退ることはしなかった。より近い間合いまで接近を許し、振り上げられた槍を右手の剣先で受け流す。まともに受け止めれば、折られるのはわかりきっていた。ギデオンのそんな反応は、バルタの目論見どおりでもあったようだ。 青銅と鉄が接触し、二種類の異なる音色が響く──刹那、跳ね上げられた右手と交差するように左手の領巾が翻り、バルタの視界を通過する。同時に、ギデオンは右足を軸に半円を描くよう、身体を反転させた。突進するバルタを擦り抜けさせて、その背後をとるべく。]