[気が散った理由は明白だった。
前をゆく男、あの茶の髪、茶の瞳。]
……どこかで見覚えがあると思ったんだ。
ダーフィトさん……
[正規軍に所属していると聞いていた。
戦場に知った顔を見ると矢張り内心に複雑な思いが浮かんでは消える。
慣れぬ州都で良くしてくれた軍部の者ら。
この秋に晴れて軍属だと晴れやかな顔で話してくれた友。
彼らもまた、同じ平原で刃交える敵兵に紛れているのやも知れず。
尤も――ダーフィトにとっては旧知の義理の息子というだけであり、会ったことを覚えているかも、定かではないのだが。]