[ハンスという名は記憶に新しい。
赴任して間もない頃にペーターが教会を訪れた。墓地に用があると言う。ペーターが真っ直ぐにに進む先に、まるで待っているかのように少年を向いて佇む墓石が一つ。そこに刻まれた名前が確かハンスだった。死んだ、ペーターの双子の片割れ。]
そう、ハンスの夢を…。
[こんな雪の日だったから、という言葉に窓から外の光景を眺める。
今朝も変わらず雪が積もっていて、あたり一面を白い雪が埋め尽くす。
ペーターに感じた違和感がもうひとつあった。一面の雪に綺麗だと言ったのに、何だか様子が可笑しかったのは、……雪が彼から片割れを奪ってしまったのか。]
…ああ、それは辛かったでしょうね。
[ペーターの表情が曇るのに眉をぎゅっと寄せた。ありがとうございます、という感謝の言葉に小さく首を振る。]