― 見えない記憶 ―[物心ついた時には、一人だった。……いや、ひとりじゃないけれど、一人だった。実の親がどこの誰だとか、どこの生まれだとか、そんな事は全然わからなくて、でも。それを寂しい、なんて思った事は、一度もなかった。理由は、物凄く、単純で。同じような境遇の仲間たちがそこにいて、同じような気持ちを分かち合えていたから。とはいえ、いつまでも同じ場所にはいられない、と。それも、わかってはいたから──だから]