[座るか、と尋ねられ、ゆっくりと首を横に振った。
それからふと、無表情の自分が傍目には色のない像のようで怖い、といつか誰かに言われたことを思い出して。
先程の一幕以降、ひどく沈んでいるその面持ちに]
こっちは大丈夫だから。
つうか、眠いんだよ――… 座ったら逆に落ちるわ。
疲れてんのは全員同じだ、怪我人が座ってろ。
[疲労と憔悴は出来る限り押し込めて、笑みを作ってみせた。
実際のところ、あの医者は藪じゃなかったようで、肩の具合も大分いい。
そうして思い出せば、自然と思考はマリエッタのことに。
そして、駆け出して行ったサシャの――…
ハダリーの声が聞こえたのは、そのときだったろうか。>>52]