―緑の聖殿―[最初に足を踏み入れた時は、馴染むような気配に包まれたというのに。今は進むのを拒むような冷気が足元から立ち昇っている。身体の奥底に霜が降りるような感触。纏わりつくように重く、じわじわと息苦しい。けれど――…“たたかえ”というあの声は、聞こえない。寄ってきた何かを払い落とすように、漆黒の髪をゆると振り、足音を殺すことなく歩を進める。誰かが奥に居るならば、来訪には簡単に気づくことが出来るだろう]