[しばらくして、控えめな足音が近づいてくる。
振り返れば、責任者の男性がにこやかな笑みを浮かべていた。]
「やぁ、刈屋君。いつも助かる。今回もよろしく頼むよ。」
いえ、こちらこそお声掛けありがとうございます。
たまには違うお客様の前でシェイカーを振るのも、楽しいものですから。
[刈屋と呼ばれた人物は、慎ましやかな笑みを浮かべる。]
[普段は、とあるバーの雇われバーテンダーであるが、この船のバーテンダーが休暇の時は、代理をと刈屋に声が掛けられる。
偶然?
……いや、必然だろうと、刈屋は薬指を飾るシャンパンゴールドに一瞬だけ視線を*落とした*。]