[しかし、研究に用いた羊皮紙は見つからない。部屋の隅には何百枚とあったはずだが、処分されてしまったのだろうか。研究目的で接収されてしまったのかとも思ったが、それはない。己の研究を否定しないような魔術師はここにはいなかったろう。]
……………
[自分の研究の価値も解らず、ただ放逐しただけの魔術師連中に対する怒りを思い出しかけるが、今はそんな場合ではないと思い直し。
そういえば、持ち歩く事のできる魔力の触媒としては最高級とも言えた、高純度の水晶も見当たらない。価値を理解した者達が利用したか、あるいは理解せずにただの宝石として取引に当てられたか。
そして、最大の価値があるもの――この部屋――については、恐らく理解した上で、封印したのだろうと思われた。何故ならば――]
……やはり残っているようだな。この魔力の流れる「路」……
[――上級レベルの魔術使いであれば解るであろう、魔界との路を繋げるために、人為的に創りだした魔力の流れ。結局、得られた力は限定的なものでしかなかったが。もしこれを完成させられていれば、あの戦の結末も変わったかもしれない。
しかし。そうでなくても、使い道はいくらもあるのだ。]