[だって本に書いてあることが本当なのか、確かめてみたくなったんだ。なんて。妙な理由を述べてみせれば、彼女はどんな顔をしたのだったか。
何も知らなかったあの頃。
少女と共に探検した街は面白くて、初めて見る世界は本には書かれてもいないことばかりで、街角に歌声が聞こえれば人垣の中に潜り込んでそれを聞き、良く分からない露店を少し背伸びして覗き込み、海近い教会の脇へまで迷い込み、二人へとへとになるまで冒険をしたた。
遊び疲れて少し熱が上がった手を、少女が一生懸命引いてくれたのを覚えてる。彼女が戻ったのは画家のロロンドの元、既に宮中はウェルシュの姿が見えないと軽い騒ぎになっていたのだろう。驚きの声と共に迎えられて、その日はすぐに少女と引き離された。]