[鍼灸師の女性は質問には答えず、そっとおでこに手を当てる>>64。
先に感じた柔らかい香りが強くなる。
虚ろな目でそれを見つめる。]
お姉……さん……
[自身はマレンマの手に繋がれたまま、ヴェルザンディが階段のある扉へ向かうのが分かる。
扉は少し開けにくそうだった。
そもそも凍って開かなくなっていたことを女は知らない。]
やだ………
私、も……
エレ、ちゃ………
[女性の後を追おうとして、足がもつれて膝をつく。手はまだマレンマと繋いだまま。
思うように動かない身体に、思わず涙が溢れた。]