[>>60 そしてシメオンの背中が遥か彼方へと消えた頃、] ―――……おかえりなさい。[弱弱しい飛び方で、薄羽蜉蝣が戻ってくる。それを手に乗せ、鼻を近づけてみやる。その虫は音も無くシメオンの肩に留まり、ただそこに居続けた。刺すことも、探ることも無い。武器としては下級の、脆弱な虫。存在感の無さだけが、唯一にして最恐の取り柄。この男のようである。]