[自身を不本意に魔物へと変じた女に対するシメオンの態度は、お世辞にも愛嬌があるとは言い難い。
ヴァンパイアの一族が棲まう城と噂を聞きつけ、徒党を組んで戦士達が攻め込んできたのは二年前の事>>7
一族の手で傷ついた青年を貰い受け、意識のない彼に一方的に血の縁を授けてからも、早二年。
何故こんな身体にしたと憤る彼に、女の答えは毎回変わった。
ある時は、あのままでは殺されると思ったからだと切々と訴え。
ある時は、人間に興味があったのだと愉しげな一瞥をくれ。
またある時は、そろそろ血の子を持つよう親が煩かったから仕方ないと嗤う。
――そうしていつも、「運が悪かったわね」と微笑で締め括る。
一度としてまともに応えない女に、青年がますます怒りを募らせたのは必然ともいえる]