……いや、違う。
[しかし、少し経つと、己はすぐに平静の声色を取り戻し、呟く。]
君の言うとおり、もし僕に感情があると認めるのであれば、僕はきっと、これまでずっと、君に――感謝していた。
そうだ。本当はずっと、お礼が言いたかったんだ。
[…は告げると、言葉とは矛盾するような普段通りの無表情を向ける。]
ありがとう。そして――
――赦してくれて、ありがとう。
[…は内容とは裏腹に、挨拶でもするかのように告げると、己の胸を自身の爪で貫いた。]
[世界が横転する。見える縦の楕円に映るのは、彼女からの手紙と墓だった。
――最期の月は、漸く白く雪色に見えた。]