― 回想・レトの部屋 ―
[赤い宴は、男が足を運ぶ以前から始まっていた。
僅かばかりの血液を吸って立ち去るものもいれば、
耳を引き千切って食したり、くちづけを送るものも居る。
その狭く昏い、血生臭い部屋にレトの嬌声は響いていただろうか。
この瞬間を覚悟していたとすれば、じっと耐えていたかも知れず。
その一部始終を他人事のように眺め、
レトの身体の再生が終わる頃、黒い影は寝台へと向かう。]
さあ、もう一度… フルコースを味わうといい。
[首筋へ牙を埋め、肉を裂くように一気に引き千切る。
再生するよりも早く、其処へ強く吸い付き舌で抉り。
これでよかったのだ、と。生贄の決定で彼の名を聞いた時
折り重なる複雑な感情の末に、そう落ち着いた。]
お前がルージュに喰われたら、
こうして、壊すことも出来ぬまま逃げられてしまうからな…