……っせい!
[上昇の頂点から素早く切り返しての急降下。
意表をついた動きから斬撃を繰り出す一撃離脱は、己が得意手ではあるが。
この時は、どうしても──太刀を振るう事ができなかった。
迷い映し翳る『月影』は、緋色にも暁紅にも触れる事ないまま、ただ、空を包む霧を揺らし]
……一先ず、勝負、預けるっ!
[代わりに、離脱間際に残すのは、こんな言葉。
逃げ出している、という自覚があるからこそ。
負けず嫌いな気質がそう、言わせていた。
それに対しどんな反応が返るのか、確かめる事もないまま。
褐色は翼を返し、白の中へと飛び込んでいく。*]