『卑怯な魔法使いめっ!!』
[ 怒りに顔を紅く染め、叩きつけるように振り下ろされた手斧を、男は、サーベルで受け流し、勢いづいて前のめりになった兵士の両眼を、返す刃で撫で斬りにした。]
魔法は卑怯で、薬は卑怯ではないというのは理屈に合わんな。
[ いくら強化されていても、弱点には違いない眼球を傷つけられ、視界を失って地に膝をついた兵士に、言い捨てて、男は空へと身を運ぶ。
万が一にも隠れ里の方角を気取られぬよう、一旦、進路を取ったのは、北の山中。
ウルの効果を受けたままの兵士を殺し切ろうとすれば、多大な労力と時間を必要とする。魔法の霧が兵士の元へ届くまで、あと僅か。霧に囚われれば傷負った兵士は、恐らくそのまま意識を落とし、少しでも追跡の手を遅らせる事ができる筈だ。
ついでに魔法使いはやはり超人兵を殺せないのだと舐めてくれれば幸いだが、そこは望み薄かもしれなかった。* ]