[寝台に横たえさせたまま、
彼女の青い髪を梳きながら苦笑する。
実のところ、彼女をあんなふうにするつもりはない。
その頬に涙の跡が残っていることに気づけば
舌先を這わせて微かに塩味のするそれを拭った。]
少し、昔のことを忘れてもらっただけさ。
とはいえ、何もかもを忘れてしまったわけではない。
そうだろう?
天使の“お嬢さん”。
[彼女の耳許に、睦言のように甘く囁くのは
この上もなく残酷な宣言。
彼女は、気づいただろうか?
天界にいた頃の“名前”を思い出すことが
できなくなっているということに。
いっそ、何もかも忘れてしまったほうが>>0:474
彼女にとっては幸福であったかもしれない。
雛鳥のように真更な状態から始めたほうが
おそらく調教も容易だろう。
だけど、それでは駄目なのだ。
あくまで、自分が欲しいのは
目の前の“彼女”その人なのだから。
魔王の傍に侍っていた天使たちのような彼女が、
見たいわけではないのだ]