[通路へは、自分が先に。
扉を開けて直ぐに目に入ったのは、五歩ほどの距離にある、鈍色。
それを視界に入れるや、一瞬で脳が情報を処理する。
“案内用ドロイド”
“この道には、いつもは、いない”
“武装はない”
耳障りな異音を発し、目に当たる部位がちかちかと赤く点滅している。
人型のその腕が、こちらに向けてぶんと振りあげられるより一手早く、
身体がふ、と沈み込み、片足が地を蹴る。
獲物を狙う豹のようにしなやかな動き、一瞬にして距離を詰めて、ヒトであるならば喉に当たる部位に拳を叩き込み、
続けざまに胴を蹴り飛ばす。
ガシャリとけたたましい音を立て、ドロイドが壁に激突した。]
――暴走か?
こいつ一体とは限らないな…
[支給された武器もあるが、エネルギー残量のことを考えれば、この先何があるかは分からないから温存した方がいい。
非武装で、素手で壊せるような相手ならば。
――尤も、いくら多少なりとも人間離れした動きが出来ると言っても、それには限度があって。
人並外れた運動能力と、過去の経歴のおかげで戦えるけれど、
例えばおとぎ話や宇宙の噂話ともいえる様々な異形の存在のような、そういった力を持つわけではない。]