― 玄関 ―
あの、もしかして……ベネディクトさん、ですか?
驚いた、あのころからほとんどお変わりない。
[記憶の中にうっすらと浮かんだ姿と比べても、彼の上に年月の埃は積もらなかったらしい。
それともあれは、先代執事の姿だったろうか?
ともかくも小さくクスッと笑って]
ご無沙汰してしまいました、お元気そうで何よりです。
そう、私は――きっと彼女に会いに来たのね。
あの子はお留守ですか?
なら、お言葉に甘えて中で待たせて頂きますね。
折角ですし、あなたも、ね?
こちらのお茶は、他ではなかなか飲めないもの。
[そう声を掛けながら、どこか浮き足立っている少年>>57の横をゆるりとすり抜けた]