― 5年前・ベルサリス学館 ―
[姫王の魂を受け継ぎし者として、幼い頃からドルマール神殿での
生活を課せられたシルキーは常々思っていた。
…――――此れでは、足りないと。
世間を知らぬ巫女姫、何も考えずに平和を祈る象徴としてのみ
存在するを受け入れるのならば構わないだろう。
だが、それならば人形を神殿に置いておけばよい。
人の形をした巫女姫が、此の国の象徴として在る意味。
其れを知りたくて、神官長に無理を言って1年間の自由を貰った。15歳の時だ。
四季祭の祭祀は務める。けれど、それ以外の時間は
シュビトのベルサリス学館で、学ばせて欲しいと。
ベルサリス学館館長ジョゼフ・ジェフロイに便宜を図ってもらい、
彼の遠縁の娘“キール”として入学した。
彼女の正体を知っている者は、学館でも一握りしかいなかっただろう]