花屋 オクタヴィア

[雪兎への感想よりも苦言が先に降ってきても動じることはなく、ニコリと彼を見上げる。]

だって、手袋してると作りにくいんだもの。

[さも当然のようにそう口にする。冷えた細い指先はシンと冷え、じわりと感覚を奪っていた。雪兎が回収されたその指先に一瞬、指先とは違う朱が映った気がして思わずその手に視線を落とす。胸の奥に湧き出るほんの少しの痛み。しかし、こみ上げかけた感情は掬われた彼の右手に溶けていった。]

持って帰っちゃダメなの？
こんなに可愛いのに。

[純粋な疑問。彼の胸の内には気付かぬままに。その後に続く指輪という言葉に目を瞬かせてキョトンとする。]

ゆび……わ………？

[その意図を汲めば、少し照れ、嬉しそうに表情を緩める。そして少しズレた返答をする。]

大丈夫。
だってギィが居てくれるもの。

[温めてくれる手を見つめてニコリ。]