ま、何はともあれ。
[足を止めた位置で、ふ、と後ろを振り返る。
とはいえ、先ほどの場所が見えるはずもないのだが]
面倒事は、さっさと片づけねーとな。
[名乗り返しと共に受け取った、食事の誘い。>>45
『美人のお誘いは社交辞令も疑っとけ』、とはまあ、例によって父の弁だが。
『獣神』への苛立ちと憤りだけを抱えて動くよりは、後にお楽しみがある方が遥かにやりがいがあるし、気合の入れ方も変わるというもの。
だから移動の直前に、「楽しみにしとく」と短く是を返しておいた。
決して楽観できない状況だからこそ──青年は悲観的な思考にならぬように、自分を律する。
その辺りは、夜風の名を冠した糸の操り方を教えてくれた師匠に教えられたもの。**]