[幾らか話していれば、そのうち小さい影>>51と対照的に大きい影>>43が見えたよう。
呼ぶ声を聞く限り、シモンに用事があるようだったので、談話室の椅子に腰掛けたままに、ゲルトが昨日手にしていた本を捲っても見ていた。
ぺらり。
無言で擦れたページを眺める。
たまに双眸を眇めては、くぁ…と大あくびを。]
――……へェ?
[しかし、道が塞がったと聞こえれば、誰にともなく相槌を打って、やや遠い会話に耳を澄ましたのだった。
会釈される様>>53が見えたなら返しもしただろうけれど、林檎を渡しそびれた、と気付くのはまだ後の話。]