そっちの都合で、堕とされるわけにゃ、いかねぇんだよっ……![『月影』を握る手に、力を込める。けれど、斬り込めない。部隊長クラスなら、落しておくべき──そんな思考は空回りする。アイヒェの家で、血の繋がりに慈しまれ、護られていたからこそ。唐突に現れたものでも──それがある、と示されたものに刃を向ける事へのためらいが生じる。戦いを望まぬような緋色の意思。それもまた、集中を乱す。そこに飛び込んできたのは──また、別の声。>>46]