[先程外に出て行ったカークの怒鳴り声>>520は、ドロイドが攻め寄せてきたあの非常時と比して、あまりに切迫したものだった。
所々色を失った呟きが聞こえながらも、不気味に静まりかえったメイン・サロンには、その声の余韻が未だ残るようで。
場の空気は一変している。
メリーのあの断末魔のような、そのくせどこか無機質な叫びが今も高く低くこだまするようでもあった。
“人狼”が一人で、真っ先に隔離されるか殺されるかしない場合は、
確実に死者は出る。
『それが』『自分には』『ならないように』
『たとえ船が終わり』『誰が死んでも』『ネオ・カナンが』『としても』
繰り言のように響く、戒めの片隅で。
ふと。“誰が死んでも”と――… そのことばに。
微かに――けれども、心臓を閉ざす氷を、音を立てて打つ錐のように。
蓋を開けてはならない心が、顔を出しそうになったのは。
―― その続きは、考えないようにした。]*