[バルコニーで援軍を送ってしまったのは分かっていたが、特に罪悪感も心配も抱いていなかった。
己が願いは自身の決められた死を達成し、恩を返すこと、野茨公が二度死ぬのを防ぐことである。
それ以外にあまり関心はないし、そうそう誰かが死ぬ自体にはならぬと思っていた。]
嗚呼、本当に面倒です。
["あまり"と"そうそう"という言葉へ、眉間に皺を寄せる。
数年過ごした彼らのことに全く興味がない訳ではないし、前庭での戦闘で、教会側の力も理解していた。
故に己の心が僅かに揺れていることに気づけば舌打ちをして、胸元の血玉を握り締める。
布越しに感じる温度に目を伏せ、廊下を歩き続けた。]
おや、また一つ面倒が。
[気配に気づいた二つの魂が揺れる様子>>50>>53を感じ取る。
リエヴルに告げたことと同様に、己の邪魔をしなければ、こちらから攻撃することはない。
気配は室内へ入ることなく少しずつ遠のき、彼らが扉を開けたとしても、曲がり角の向こうに消える背中を見ることになるだろう。]