[……まあ、観光客はともかく、村に商いにくる人間なんかは、実用的であればよいことから、この宿を選ぶ。](実際、お得意様にはサービスしてるんだからね)[風評だけで隣村や山の麓の町の宿を選ぶようなやからは、もとからうちの客じゃないのさ。そんなあしらうようなセリフは女主人の矜持か、はたまた単なる強がりか……。とりとめない思考は、待望の客が宿を訪ねてくるまで、一人続くのだった]