― 臨時元帥府・上空 ―
[それは、奇跡の起こるほんの少し前の事。
天上の響き、それによって得た報せ。
在るべき領域を違えつつ、けれど、信と敬意を抱いていた光の消滅は、影の予定を一つ変えていた]
……クレメンス・デューラーの心意気に敬意を表し、このまま去るのも悪くないかとは思ったんだが。
さすがに、ちょっと事情が変わったな。
[低く呟き、両の手に短刀を構える。
周囲でゆらり、と影が揺れた]
己が務めと在り方を貫きし光へ、俺なりの手向けだ。
ゆらゆらゆら。
揺らめき集え、影の華。
[紡がれる呪に応じ、空中に薄墨色の華が複数開く]
集いて開き、散り果てよ……!
[宣と共に振り下ろされる、刃。
それに従うように地へと落ちた華は直後、一斉に爆発する]