― サクソー川/橋北側 ―
[あれと同じ声を前にも聞いた。
いや。前のは墜ちた主を悼む悲痛な声で、今のは今の主に捧げる魂の声だろう。オクタヴィアスを呼んだのだろう声に、呼ばれた相手のことを思う。
命を賭けてでも彼のために在ろうという者を、彼はどれほど得たのだろうか。
少なくとも、目の前の相手はその一人だ。]
俺もだ。
ここを押し通る理由が、一つ増えた。
[同時に、かの勇士を退けた者のことを思う。
忠実にして勇猛なる森の王者。
その大きくて温かい手を、豪快な笑い声を思い出す。
彼が道を切り開いたのならば、自分はその忠に応えねばならぬ。]