― 村外 ―
[村の外は激しい吹雪だった。辺り一面白い雪に覆われている。息も凍るような空気。息を吸い込めば肺が軋んだ。
アルビンはまっさらな雪の上に足跡をつけていく。けれども直ぐに空から降る雪に足跡は消えていった。
モーリッツから人狼の話しを聞かされたせいか、伝承の一節がアルビンの頭から離れない。
生き物をそのまま凍りつかせるほどの氷に閉ざされた時、
銀色に輝く月に照らされた「人狼」がその血に目覚める。
どうして、氷に閉ざされた時に人狼は目覚めるのだろうか。
全てが凍り白に埋め尽くされる。そんな淋しい光景が何かを呼び起こすのだろうか。]